救急外来で活用する高齢者の社会生活状況把握チェックシートを開発 - 救急医療と地域包括ケアをつなげる取り組みに向けて-
救急車を利用して医療機関を受診し入院せずに帰宅する患者には、個人の社会的ニーズを満たすような支援が提供されることはほとんどありません。そこで、東京大学大学院医学系研究科 近藤尚己准教授(研究当時、現:京都大学大学院教授)、上野恵子 同博士課程学生(研究当時、現:京都大学大学院助教)らの研究グループは、その中でも支援の必要性が高い高齢者の社会生活状況を簡便に把握し、多職種で共有するチェックシートを作成しました。本研究では、救急救命士、看護師、医療ソーシャルワーカーなどの合計28名の参加者を対象に、3回の質問紙調査からなる修正デルファイ法を実施しました。その結果、住環境、世帯構成、経済状況等の28項目を共有するチェックシートを作成しました。
本研究で作成されたチェックシートは、救急医療に関係する多職種間の情報共有や連携を促進する手がかりになると考えられ、今後実用化が期待されます。なお、実用化に向けては、チェックシート項目の信頼性・予測妥当性を検証し、運用プロトコルの構築を進めていく必要があります。
本成果は、2023年8月31日に「日本臨床救急医学会雑誌」にオンライン掲載されました。
論文の概要(日本語版)
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生活保護を利用する高齢者のサブグループごとの日常生活上のニーズが明らかに
日本でも健康格差が社会問題となっています。健康格差を減少させるためには、個人レベルの介入から社会レベルの介入への変換が必要です。2021年より全国の福祉事務所で生活保護利用者への健康管理支援事業が必須事業となりました。そこで、本研究では、生活保護利用者の中でも特に健康・生活上の支援を必要としている高齢者に焦点を当て、生活保護を利用する高齢者のサブグループがどのような日常生活上のニーズを抱えているかを理解することを目的としました。
2021年に2自治体の福祉事務所のケースワーカー4人にインタビュー調査を実施しました。私たちが以前実施した量的研究で得られた生活保護を利用する高齢者の男女別の5つのサブグループの結果をケースワーカーに提示して、それぞれのサブグループが抱える日常生活上のニーズを聞き取りました。インタビューの結果、生活保護を利用する高齢者のサブグループには、次の5つの日常生活上のニーズがあることが明らかとなりました:①住居のニーズ、②金銭的ニーズ、③福祉サービス利用のニーズ、④医療ニーズ、⑤日常生活上のニーズなし。この結果から、生活保護を利用する高齢者のサブグループごとに適切な支援の介入が必要であることが分かりました。今後、他分野の専門職(保健師、社会福祉士など)にもインタビュー調査を行い、生活保護を利用する高齢者のサブグループの日常生活上のニーズをさらに理解することが望まれます。
本成果は、2024年7月14日にGlobal Health &Medicineにオンライン掲載されました。
論文へ第27回日本臨床救急医学会総会・学術集会で発表しました
2024年7月18~20日に鹿児島県で開催された第27回日本臨床救急医学会総会・学術集会の一般演題口演27「地域救急医療体制・メディカルコントロール」セクションで講演発表しました。「消防機関と介護・福祉・保健機関の連携体制の全国実態調査結果」と題し、昨年度実施した一般社団法人救急振興財団救急救命の高度化の推進に関する調査研究事業「消防機関と介護・福祉・保健機関の連携体制の実態調査と課題の抽出」(https://fasd.jp/files/libs/6358/202403190929332199.pdf)から、全国の消防機関と介護・福祉・保健機関との連携体制のアンケート調査の概要結果について報告しました。
本学会はハイブリッド開催であり、私は現地参加が叶わずオンライン参加となりました。学会のオンラインプラットホーム上で私の発表についてコメントをいただいたり、私も他の発表を拝見してコメントできたりと、これまでにない形で議論できて面白かったです。
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