救急外来で活用する高齢者の社会生活状況把握チェックシートを開発 - 救急医療と地域包括ケアをつなげる取り組みに向けて-
救急車を利用して医療機関を受診し入院せずに帰宅する患者には、個人の社会的ニーズを満たすような支援が提供されることはほとんどありません。そこで、東京大学大学院医学系研究科 近藤尚己准教授(研究当時、現:京都大学大学院教授)、上野恵子 同博士課程学生(研究当時、現:京都大学大学院助教)らの研究グループは、その中でも支援の必要性が高い高齢者の社会生活状況を簡便に把握し、多職種で共有するチェックシートを作成しました。本研究では、救急救命士、看護師、医療ソーシャルワーカーなどの合計28名の参加者を対象に、3回の質問紙調査からなる修正デルファイ法を実施しました。その結果、住環境、世帯構成、経済状況等の28項目を共有するチェックシートを作成しました。
本研究で作成されたチェックシートは、救急医療に関係する多職種間の情報共有や連携を促進する手がかりになると考えられ、今後実用化が期待されます。なお、実用化に向けては、チェックシート項目の信頼性・予測妥当性を検証し、運用プロトコルの構築を進めていく必要があります。
本成果は、2023年8月31日に「日本臨床救急医学会雑誌」にオンライン掲載されました。
論文の概要(日本語版)
論文へ
第27回日本臨床救急医学会総会・学術集会で発表しました
2024年7月18~20日に鹿児島県で開催された第27回日本臨床救急医学会総会・学術集会の一般演題口演27「地域救急医療体制・メディカルコントロール」セクションで講演発表しました。「消防機関と介護・福祉・保健機関の連携体制の全国実態調査結果」と題し、昨年度実施した一般社団法人救急振興財団救急救命の高度化の推進に関する調査研究事業「消防機関と介護・福祉・保健機関の連携体制の実態調査と課題の抽出」(https://fasd.jp/files/libs/6358/202403190929332199.pdf)から、全国の消防機関と介護・福祉・保健機関との連携体制のアンケート調査の概要結果について報告しました。
本学会はハイブリッド開催であり、私は現地参加が叶わずオンライン参加となりました。学会のオンラインプラットホーム上で私の発表についてコメントをいただいたり、私も他の発表を拝見してコメントできたりと、これまでにない形で議論できて面白かったです。
発表資料はこちら
第83回日本公衆衛生学会総会で発表しました
2024年10月29~31日に札幌市で開催された第83回日本公衆衛生学会総会の一般演題口演第16分科会「保健所・衛生行政・地域保健」で発表しました。「消防機関と介護・福祉・保健機関の連携体制の実態と連携上の課題:全国調査結果」と題し、昨年度実施した一般社団法人救急振興財団救急救命の高度化の推進に関する調査研究事業「消防機関と介護・福祉・保健機関の連携体制の実態調査と課題の抽出」(https://fasd.jp/files/libs/6358/202403190929332199.pdf)から、全国の消防機関と介護・福祉・保健機関との連携体制のアンケート調査結果のうち、連携する際の課題を中心に報告しました。
消防機関と実際に連携をしている行政機関の先生からお声掛けをいただき、公衆衛生分野でも展開していきたいテーマだと実感しました。
発表資料はこちら
第30回国際HPHカンファレンスで発表しました
2024年11月6~8日に広島県で開催された第30回国際HPHカンファレンス(30th International Conference on Health Promoting Hospitals and Health Services)の一般演題口演O3.6 "Promoting health of the elderly"で発表しました。「Development of a check sheet for assessing the social and living conditions of older people with minor diseases in the emergency room」と題し、2023年に出版した「救急搬送された軽症高齢者の社会生活状況を多職種で把握・共有するためのチェックシートの開発」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/26/4/26_455/_article/-char/ja/)の結果を報告しました。参加者の方々から研究結果についてご質問をいただき、他の口演発表者の方々からも自国の救急医療システムについて教えていただくなど、実りの多い機会となりました。
発表資料はこちら
「神戸市ヘルスケアデータ連携システム」公募研究に採択されました
神戸市が2020年より整備している「神戸市ヘルスケアデータ連携システム」を活用し、神戸市の保健・医療施策の企画・立案につなげることを目的とした公募研究に採択されました。私が取り組むテーマは「増え続ける救急需要対策に資する研究」です。神戸市の救急医療施策に還元できるような研究結果を提示できるように頑張ります。
神戸市ヘルスケアデータ連携システムHPはこちら